和箪笥と暮らす。 芸術作品のような美しさを誇りながら、美術品ではなく、実際に触れて、感じられる。それこそが家具である和箪笥の素晴らしさです。日常的につかわれてこそ輝き続けられ、生活の中にあるからこそ、その風貌で歴史を語ってくれます。現代においても色褪せない、比類なき和箪笥たち。その伝統美にあなたも魅せられるはずです。

水屋箪笥

水屋箪笥

水屋という言葉は本来、茶室に付属する、茶事の準備や片付けをするための控室のような場所の名称でした。それが転じて、いつしか台所で使われる箪笥が水屋と呼ばれるようになりました。燻された味わいのある木味、装飾的ではないのに主張がある上品でモダンなデザイン。大きいものは九尺にもなるそのサイズなど、他の箪笥とはまったく異なる性質を持つ、唯一無二の箪笥・水屋箪笥。堂々と直立し、美しく黒光りするそれは、まさに台所の主役であり、長者の証明です。

船箪笥

船箪笥

江戸時代から明治にかけて、物資輸送を行っていた廻船の中で船乗りたちが使っていた箪笥。それが船箪笥です。富と権力の象徴として船乗りたちは豪華な船箪笥を所有していました。「世界中のどんな工芸品を出されても臆することはない。日本には船箪笥がある。」と言った古人がいるほど、只ならぬ造り込みを誇る、まるで美術品のように美しい”箪笥の王様”です。狭い船内でも使いやすく、持ち運びもしやすいよう小型であり、荒波にも耐えられるよう堅牢につくられているのが特徴です。

衣装箪笥

衣装箪笥

衣装箪笥が全国各地へ広まったのは、他の箪笥よりも早い元禄年間(1688〜1704年)のこと。その頃、友禅染が発明され、派手な小袖が流行しました。小袖を収納する為の箪笥だったので、当初は小袖箪笥とも呼ばれていたようです。町民の生活が豊かになり、箪笥作りの環境が整った明治時代以降、衣装箪笥の意匠は格段に進化し、各地の条件を色濃く反映した、今日の衣装箪笥が生まれました。地方ごとにまったく異なる、その多様性が当時の生活や文化、そして人々の感性を映しだします。

帳場箪笥

帳場箪笥

店や旅館などで支払いをしたり、帳簿を付けたりする場所、帳場で使われていた帳場箪笥。商売をするために必要な書類や印鑑や金銭などを入れておく金庫として、江戸時代から発展していきました。全てが注文造りで、お金持ちのわがままを反映した造りになっているものが多いため、それぞれ面白いものが多く、見ごたえがあり、バラエティー豊か。知れば知るほどにその奥深さに引き込まれる帳場箪笥は、金庫としての役割を終えた現代においても、その造形美から価値が色褪せない不朽の箪笥です。

車箪笥

車箪笥

車箪笥とは名前のとおり、下部に車が付いた箪笥のことです。大きく分けて二つの種類があり、一つは車長持(車が付いた蓋付きの収納箱)が原型となったもの。もう一つは帳場箪笥に車がついたものです。大きいものから小さいものまで様々な大きさのものがありますが、車箪笥の良さがありありと分かるのは大きなサイズのもの。欅材の風格を存分に味わえる太い框組に、分厚い素材。これは、車輪が付いていないと動かせまい。と、見ただけでわかるような重量感が風格を醸し出します。

階段箪笥

階段箪笥

日本家屋の狭い空間を巧みに利用した、町人の合理主義の結晶・階段箪笥。二階に上がる階段に引き戸や引き出しを取りつけて、収納家具として使えるようにしたものです。階段箪笥の見どころは、なんと言っても引き出しと引き戸の調和。段の形に合わせて、形や大きさが様々な引き出しと引き戸収納が作られます。この不揃いな大きさの収納が便利で、美しいのです。また、狭い住宅の中でも風体が良いようにという計らいからなのか、必要以上の装飾性がない、上品なデザインが現代においても新鮮に映ります。

観音箪笥

観音箪笥

主に関東一円で造られていた、観音箪笥。金具が力強く大きいのが特徴です。一見派手に見えますが華やかさはなく、上方の箪笥と比べると男性的な荒々しい雰囲気があります。華美なものが”野暮”とされた、江戸っ子の美学が感じられる”粋”な装飾です。経年の深みが感じられる桐材の木味と漆黒の金具の調和。関東の観音箪笥ならではの伝統的なデザインが魅力です。

茶箪笥

茶箪笥

茶室やお茶の間、客室などに置かれ、急須や湯飲みなどの茶道具が収納してある茶箪笥。その起源は、茶道の第一人者である千利休が考案したと言われる、箱型の茶道具入れでした。現在知られているような茶箪笥の形が定着したのは、各家庭に茶の間という部屋が存在するようになった、明治後期になってからのことです。きっちり四角いフォルムが多い和箪笥の中で、収納という視点から言えば無駄が多いデザインの茶箪笥。その余裕が、贅沢な優雅さを演出してくれます。